まえがき
こんにちわ、すずめ番号です。
雑多で拙い文章に目を通してくださり感謝しています。
このブログを始めた当初の目的としては1つ、「自分のアウトプットを不特定多数の目に晒すことで得られる程良いプレッシャーで習慣づけを促したい」というものがありました。それまでは日記を書き始めても三日坊主に終わり、前半の数ページだけが埋まったノートが増えるばかり。これといった習慣は一切ありませんでした。現在のブログ連続更新記録は驚異の253日。私にとってはとんでもない快挙です。
皆さんのおかげでもあります。ありがとうございます。
2023年に私が聴いた42枚
RYM記録だと今年は900枚程アルバムを聴いたみたいです。そんな中でも、今年聴いて衝撃を受けたものを42枚ででんとまとめました。新譜はAOTYを組めるほど聴いておらず、かなり旧譜に偏っていますが許してください。大きく5つに分類して以下にまとめていきます。
Topsters 2で作った2023年の42枚。42という数字の意味は不明
①リズム開拓
- Giorgio Moroder - From Here To Eternity (1977)
- Steve Reich - Music For 18 Musicians (1978)
- King Crimson - Discipline (1981)
- 808 State - 90 (1989)
- James Brown - Love Power Peace 1971 (1992)
- Screaming Headless Torsos - Screaming Headless Torsos (1995)
- The Dillinger Escape Plan - Calculating Infinity (1999)
- Tool - 10,000 Days (2006)
- György Ligeti - Études pour piano (2012)
- Meshuggah - The Violent Sleep Of Reason (2016)
- 長谷川白紙 - エアにに (2022)
Giorgio Moroderや808 Stateの古典テクノサウンド、Steve Reichの究極のミニマル・ミュージック、立ち上がりたくなるJames Brownのグルーヴなど、様々なリズムと格闘しました。そんな中でもMeshuggahを深堀りしたのは大正解でした。Meshuggahのリズム概念は抜きん出ています。複雑なリズムパターンを4/4拍子の枠組みに収めるといったマクロ/ミクロの構造は芸術的であると同時に能動的な音楽体験にも繋がり、実際私はマクロ/ミクロを同時に処理する音楽の聴き方を習得しました。
今回は一番聴いた作品だったので8thを挙げましたが、彼らのベストはNothingかobZenのどちらかだと思います。しかしなぜ私が8thを一番聴いたのか、それは単に難解だからです。いつもより長いスパンでの反復、尻切れリフをさらに切り刻み並び替えるといった『In Death - Is Life』『I』のランダム性にも似た要素、インド音楽にも通ずるフレーズの展開などさらに押し進んだソングライティングが、ローエンドまでギチギチに詰まった隙の無いプロダクションで固められています。回数を重ねないと平坦で味気なく聴こえるほどの手の込み具合です(私も最初はスローテンポの曲が苦手だった)。まさにスルメ。紛れもない名盤です。
ToolはしばしばMeshuggahと比較されるようですが、音楽性は大きく異なります。しかしこの2バンドには共通の影響元として『Discipline』期のKing Crimsonの存在があると思われます。『Discipline』がどれだけのアルバムなのか…。偉大な2バンドに通ずるポリメーターを80年代前半にやってのけている恐ろしさ。
選んだ42枚の中で唯一の現代音楽であるGyörgy Ligetiの『ピアノ練習曲集』。豊かな想像力を感じる作品で、楽譜を観ながら聴くと二度美味しいです。ここでもポリメーターの概念が見られました。
日本人アーティストからは長谷川白紙の『エアにに』。ポップとアヴァンギャルドの究極合体です。Frank Zappaみたいな躍動のリズムとファンシーの裏側にグロテスクさが透けて見えるような唯一無二の世界観に殴られざるを得ない。一見複雑でも「歌モノ」として捉えられる構成が見事です。まだMeshuggah式には到達していないんですけど、既にCar Bombを聴いているらしい*1ので時間の問題だと思います。年齢も近いので、聴いていて焦らされるアーティストです。
②ジャズ
- Clifford Brown - Clifford Brown And Max Roach (1954)
- Oscar Peterson - Plays Count Basie (1956)
- Charles Mingus - Ah Um (1959)
- The Joe Harriott Double Quintet - Indo Jazz Suite (1966)
- Bill Evans - You Must Believe in Spring (1981)
ジャズはイマイチ分からないまま聴いています。とりあえず今言えることは、モード・ジャズよりもバップ周辺が好みだということです。『Kind of Blue』は未だに掴み切れていません。
Bill Evansのピアノプレイは常に絶品です。『B Minor Waltz』は久しぶりに弾きたいと思わせてくれた(そして実際に弾けるようになった)曲でした。ずっと聴いてたらマジで泣きそうになりました。
Charles Mingusも色々聴いています。どこかキャッチーなところがあって、たまにカワイイかったりします。『Bird Calls』はダカンのかっこうみたいで好き。
The Joe Harriott Double Quintetの『Indo Jazz Suite』は#112の「1日1ラ」で出会いました。「1日1ラ」の利点は、埋もれた作品をひょいと掘り当てられる可能性があること。インド・ジャズというタイトルの通り、インド要素が混ざっているのでかなり面白いです。演奏技術も高くしっかり本格的でもあります。多分ジャケットで判断していたら聴いていなかったと思いますw
③ジャズ・ロック
- Frank Zappa - Apostrophe (1974)
- Ruins - Hyderomastgroningem (1995)
- Electric Masada - At the Mountain of Madness (2005)
Zappaはディスコグラフィが多すぎるのでちまちま聴いています。『Apostrophe』は比較的分かりやすかったです。他には『Jazz From Hell』がYMO『テクノデリック』と似た感触があって良かったです。
John Zorn主催のレーベル・Tzadikのサブスク解禁により数えきれないほどの刺激的な作品がインターネッツにばら撒かれました。RuinsとElectric Masadaは以前から目を付けていたので、さっそく聴いてみたところ期待以上に良かったです。この2組はズールというMagma直系のプログレにもカテゴライズされるのですが、やっぱりこの原始的なバイブスはなかなか感じられないものですね。煮えたぎる狂気を飼い慣らす精密な演奏。どちらも通して聴くことを強くおすすめします。
④音が凄い
- The Stone Roses - The Stone Roses (1989)
- A Tribe Called Quest - The Low End Theory (1991)
- Strapping Young Lad - City (1997)
- XTC - Apple Venus Volume 1 (1999)
- Boris - Boris at Last - Feedbacker (2003)
- Sunn O))) - Monoliths And Dimensions (2009)
- 神聖かまってちゃん - つまんね (2010)
- 김뜻돌 - 꿈에서 걸려온 전화 (2020)
- 冥丁 - 古風 Ⅲ (2023)
- JPEGMAFIA - SCARING THE HOES (2023)
BorisとSunn O)))の凶悪なドローンは、存分に新しい扉を開いてくれました。爆音で聴くほど脳がとろけて最高。異世界に強制ワープさせられます。常にメロディーを探してしまう自分には意味不明だったノイズの世界に一歩前進した気分です。
The Stone Rosesの1stは『Fools Gold』しか良さが分かっていなかったのに、久しぶりに聴いたら全部が素晴らしかったです。天国。ジャンルは違えど『Pet Sounds』と同系統の暖かみを帯びています。暖かいといったら김뜻돌・Meaningful Stone、冥丁の新作もそうでした。前者は陽の光を浴びているような、後者は生温い曇りの日のような暖かさがあります。それぞれ違ったテイスト。
攻撃的だったのはStrapping Young Lad(物理的)と神聖かまってちゃん(精神的)。
ジャジーでブーンバップなA Tribe Called Quest、斜め上のサンプリングが奇天烈に絡み合うJPEGMAFIAなど、ヒップホップでも面白いものがありました。こういう音の乗せ方もあるんだなとかなり勉強になります。
⑤アルバムの完成度
- The Beatles - Revolver (1966)
- Yes - Close to the Edge (1972)
- P-MODEL - IN A MODEL ROOM (1979)
- Sepultura - Chaos A.D. (1993)
- THEE MICHELLE GUN ELEPHANT - GEAR BLUES (1998)
- スピッツ - ハヤブサ (2000)
- THA BLUE HERB - Sell Our Soul (2002)
- Plus-Tech Squeeze Box - CARTOOOM! (2004)
- 3776 - 歳時記 (2019)
- GEZAN - あのち (2023)
- People In The Box - Camera Obscura (2023)
- KIRINJI - Steppin' Out (2023)
なんかここの枠だけ日本のアーティストが多い。
クラシック枠にThe BeatlesとYes。聴き返してやっぱり凄いと実感。
#117の「1日1ラ」で出会ったPlus-Tech Squeeze Box『CARTOOOM!』は素晴らしいコンセプト・アルバムでした。もっと評価されるべきです。3776も同じく。
GEZAN、People In The Box、KIRINJIの新譜は相変わらずの高完成度。アルバムに通った芯は楽曲のメッセージ性をさらに補強し、大きな未来予想図に。ポスト・コロナの世の中に独自のレンズを通し現実と希望を見出せるようなアルバムたちです。
スピッツは『スピッツ論』の手助けもあり解像度が一気に高まりました。『ハヤブサ』はオルタナ精神が色濃く表れた魅力的な一枚です。スピッツは他のバンド/アーティストに比べて気分で好きなアルバムが変わりやすいのですが、今日は『三日月ロック』な気分です。
流れてきたチバユウスケの訃報、ショックが遅れて来る前にすかさず再生したTHEE MICHELLE GUN ELEPHANT。『GEAR BLUES』はほとばしるロックンロールの血筋がパンク寸前まで(パンクしてるのかも)パッケージングされた名盤に違いありません。
まとめと反省
家で聴いていたのとは別に、ライブも2回行きました。
4月のKNOTFEST(Petit Brabancon/MEANING/Fear, and Loathing in Las Vegas/Coldrain/Parkway Drive/マキシマム ザ ホルモン/KoRn/Slipknot)、12月のJim O'Rourkeです。出不精の私にしてはよくやったと思います。
色々総合して、主にMeshuggahにやられ続けた1年間でした。ほんとに。
さて、音楽の振り返りだけでなく、ブログの振り返りもしなければ。
当ブログを立ち上げたのは今年の3/23。受験勉強もままならなかった病的な高校生活がようやく終わり、何か新しいことを始めようとしていたところでした。自分の特技はなんだろうと考えたときに真っ先に出てくるのはいつも「音楽」。しかしそれは漠然としていて、無論音楽好きではありましたが、作るという面でも分析するという面でも弱いという自覚がありました。じゃあどうしようか。いわゆる「ニワカ」だけど、それでもかろうじて文章を書くことはできるかも。なら少しずつでもニワカの成長を綴っていけば面白いんじゃないか?と思って始めたのがこのブログです。
とにかく精神の健康を保つことを最優先しながらこの1年間を過ごしてきました。おかげで今は健康です。それはそれとして…
改めて振り返ると、当初の方向性は見事に逸れていったことがよく分かります。
Joy Divisionを真面目に理解する試み、三味線とギターがどうとかいう最初期の記事はそういった意思が感じ取れるものが多いんですけど、毎日更新を意識し記事数が増えるにつれ「ニワカの成長」とやらはどこかにいってしまいました。
「今日の吸収」初回に書かれていた「その日に吸収した音楽に対しての所感をつらつらと綴っていきます」といった方針も消え去り、現在はただ作品を羅列するだけの有様。かなりヒドイ。
#22で始めた「1日1ランダムアルバム」は継続さえしているものの、もはやそれだけしか書かない日も多くなっている現状。漏れなく昨日も。前述した通り「1日1ラ」で出会えた名盤も沢山あったため今後も続けていく予定ではありますが、あくまでもサブコンテンツだという意識を置いておきます。惰性になりつつあるので改良も施します。キリのいい年明けから色々試してみますね。
何はともあれこの1年は休養期間でもあったので、来年からはより精力的に活動していこうと思います。いや、こういう言い方をすると後々めんどくさくなるから、それなりに頑張ります!新譜も聴きます。来年もよろしくお願いします。