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Number_iのラップに痺れる/12月は何聴いた?【今日の吸収 #250】

おはようございます。

  • CHUCK TAYLORS - BRAND NEW DAYS (2023)
    90s王道ロック ボーカルからは奥田民生のバイブスを感じる
  • 打首獄門同好会 - ぼちぼちベテラン (2024)
    名前こそ知っていたものの初めて聴いたが、筋少とかホルモンに近かった
  • group_inou - HAPPY (2024)
    こちらも初めて聴いた ゆるくコミカルなテクノ・ラップ? 味噌田楽は間違いないね
  • Kaho Matsui - rid (2024)
    暖かい日にぴったりのフォークトロニカ/アンビエント 掠れの美しさを感じる
  • Aaru - SWNPL (2024)
    ジャケットからは想像し難いジェントのインスト 飛び道具でごまかしていてつまらない
  • Orkun A. - Archaic (2024)
    Tim Heckerに近いピアノ/ストリングス主体のアンビエント 幻想的なだけ
  • Pavement - Slanted and Enchanted (1992)
    2nd、3rdは聴いていたので 野性的でカッコいい スラッカーという文化を知った
  • sumika - For. (2022)
    元気があって良い 前はボーカルの声質が苦手だったが普通に聴けた

フルアルバムからEP、シングルまで新譜いっぱい聴きデーでした。今日ビビっときたのはNumber_iという男性アイドルグループの《GOAT》です。

私はアイドル文化にかなり疎く、Number_iというグループ名はもちろん初耳。メンバーを調べてみると、平野紫耀神宮寺勇太、岸優太の3人らしい。平野紫耀は知っていましたが、それ以外は名前しか聞いたことがありませんでした。調べてみるとどうやら3人全員が元King&Princeで、そのKing&Princeはというと現在2人体制だという。SMAPみたいに分裂したってことなんですか。

まあともかく、Number_i《GOAT》にはジャニーズで見られるようなキャピキャピ感がほとんどなく、メロディがない硬派なラップとして聴くことが出来ます。ここまで忌避感が湧かないアイドルソング?は初めてかもしれない。

そもそも全員声がカッコよくて、MVを観るとKing&Princeのイメージとかけ離れた声色のギャップでやられてしまいました。渋い低音の平野、ハリのあるオーソドックスな神宮寺、高音寄りでユーモラスな岸、というバランスも素晴らしいと思います。

特にヤバかったのが1:38~(MVは1:42~)の岸バース。アクセントをずらし、前ノリ/後ノリ使い分けたオフビートを効かせた奇天烈フロウが炸裂。こんなの並大抵のスキルじゃ無理です。初聴時、ドラムパターンの変化も相まって拍子感覚が迷子になってしまいました。「なにこれ~」とビックリしてすぐ巻き戻しました。Dos MonosのTaitanを思い出しちゃんました。あと、同じリリックを平野が担当しているのですが乗り方を変えています。フロウを使い回しすぎないのも手が込んでいてスバラシポイントです(このパートに限った話ではないのですが)。

楽曲全体の構成も良い。まずK-POP/EDM風なイントロを通りダブステップのようにワブルベースが唸り始める。〈I'm the New GOAT〉で入るドロップは808っぽいスネアに切り替えトラップ調に持っていく。「GOAT」連呼のリズムはジャージー・クラブを連想させる。細かいハイハットとオートチューンをアウトロまで残しておくのも凄い。クラブ・ミュージックの色々が盛り込まれていて上手だなと思います。

食わず嫌いはやっぱり良くない。舐めたらアカンです。これを機にアイドルも見境なく聴いていきたいと思った一日でした。

 

さてさて

年越しの話題を優先して先月のまとめを書いていなかった。ということで今日は月間まとめを書きます。今まで使ってきたLast.fmの期間指定が効かなくなったので、連携できるFinaleというサイトでまとめ画像を作ってもらいました。かなり楽でいいですね!

 

12月のTOP9

 

1位・Squarepusher(130)

個性的な音楽を分析する上で、インスピレーション元を知ることはとても大切です。去年からドハマりしているMeshuggahのアプローチの由来を少しでも明らかにするために、彼らがインタビューでよく名前を出していたSquarepusherを聴くことにしました。2002年前後にToolに勧められて初めて聴いたのが『Go Plastic』だとギタリストのMårtenは語っています*1

『Go Plastic』はタイトル通り生感のあるテクスチャを排し、デジタルで機械的サウンドを追求した作品で、自らの音楽性を「binary style」と称する*2Meshuggahがインスピレーションを受けたのも納得でした。とはいってもまだ深堀りする必要はありそうです。

他の作品も気になって、そのまま9thまでしっかり聴きました。今のところアルバムとして好きなのは1stと7th。曲単位だと《E8 Boogie》と《Go! Spastic》を選ぶかな。

2位・Ruins(113)

全部聴きたくなっちゃったタイプのアーティストその2。高円寺百景あぶらだこ(一時)などその他多数の形態で精力的に活動しているドラマー・吉田達也が指揮を執るアヴァンギャルドプログレッシヴ・ロック、すなわちアヴァン・プログのバンドです。ただでさえ前進的(progressive)なのに、革新的(avant-garde)までついちゃって凄いジャンル名。彼らの音楽性はまったく名前負けしていません。基本がベースとドラムのデュオ、という時点で既に尖り具合が分かると思います。

Ruinsはアヴァン・プログでもあり、ズールというジャンルでもあります。ズールの生みの親であるMagmaのドラマー・Christian Vanderが言うには、ズールとは「振動する音楽(=vibratory music)」らしいです*3。よくわかりませんが、百聞は一見にしかず、いや「百見は一聞にしかず」ということで聴いてみてください。

年間まとめで《Hyderomastgroningem》を選出しましたが、新しめの《Pallaschtom》《Tzomborgha》も面白い。3種のジャンル(クラシック/ハード・ロックプログレ)の名フレーズを継ぎ接ぎに詰め込んだメドレーからは遊び心とリスペクトを感じますね。ちなみにRYMのherkyjerky氏によるレビューに元ネタがまとめられています。

3位・The Dillinger Escape Plan(76)

ハードコアの派生であるマスコアという激しくて複雑な音楽をやっているバンド。他のマスコアバンドとは比べ物にならないカオスさがあります。ギタリストのBen WeinmanとMeshuggahのJensがインタビューしている動画から興味を持ち、無事ディスコグラフィを網羅しました。

Meshuggahは4/4の枠の中で逸脱したフレーズを反復しているのに対し、こちらは枠すらぐにゃぐにゃに伸縮させ、境目が分からない不規則すぎるリズムを息つく暇も無く大量放出してきます。まったく展開が読めない上に覚えられないので、今のところは何度聴いても新鮮。

初期衝動ハードコア全開の《Calculating Infinity》、フュージョンやポップにも接近した《Ive Works》、まとまっていて聴きやすい《One of Us Is the Killer》など作風はいろいろ。同じくカオスの肩を持つMike Pattonとのベストマッチなコラボで生まれた《Irony Is a Dead Scene》もすげー面白かったです。

2017年に解散しましたが、どうやら今年の6月にデビュー25周年を記念して再結成、1st再現ライヴを行うらしい*4です。来日してくれたら嬉しい。

その他ビビっときた曲

  • Cannibal Corpse《Innards Decay》
  • Charles Mingus《Track C-Group Dancers》
  • Arnold Schönberg《Verklärte Nacht》
  • 羊文学《深呼吸》
  • Portico Quartet《Dawn Patrol》
  • Portico Quartet《Isla》
  • The Stone Roses《This Is The One》
  • Jaco Pastorius《Balloon Song》
  • Deafheaven《Sunbather》
  • 小林大吾《石蕗》
  • Oneohtrix Point Never《Memories Of Music》
  • Slint《Good Morning, Captain》
  • Don Cherry《Complete Communion》

総括

TOP3からやっとMeshuggahが消えました(4位ではあるけど)。次のアーティストに移れそうな感じはありますが、まだまだ聴き倒します。逆張りや食わず嫌いも着実に潰し始めました。避けているものほど良かったりするのなんなんだろう。K-POPも絶賛逆張り中なので、これもそろそろ解きたい。とはいってもやっぱり日本に住んでいるんだから、日本の音楽はより沢山聴いていきたいところです。

 

今日はここいらで、おやすみなさい。