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King Gnuの新譜でイカロスになれる【今日の吸収#215】

おはようございます。

  • 💿King Gnu - The Greatest Unknown (2023) 👀
  • 💿Dillinger Escape Plan - Ire Works (2007)
  • 💿Rilo Kiley - The Execution of All Things (2002)

King Gnuの4年振り新アルバム『THE GREATEST UNKNOWN』を聴きました。

3rd『CEREMONY』後のシングル含めた13ものタイアップ曲、7つのインタールード、そして完全新曲『IKAROS』を付け加えたといった構成。いくつかの既存曲はALBUM ver.としてアレンジが施されていて二度楽しめます。メジャー第一線のアーティストにありがちな「ベストアルバム状態」に陥っているようですがインタールードと曲順のおかげで綺麗にまとまっています。例えば『CHAMELEON』の「僕の知らない君は誰?」→『DARE??』→『SPECIALZ』の「"U R MY SPECIAL"」とか、新しい文脈・ストーリー性を持たせたりしているのも面白いです。呪術廻戦メドレー(『一途』のアウトロがNirvana『Breed』みたいになっていた)を経て、気になる『IKAROS』へ向かいます。

IKAROS』、これ優勝です。ゆったり揺らぐビートと夢心地の音風景。序盤は井口が透き通った高音でリードし、「AND NOW FALLING DOWN」~からは常田のねっとりとした低音と間隔を狭めたキックがまるで重力のように曲全体を支配し始めます。祝福感のあるマンドリン?のトレモロは太陽に照らされ煌々と輝く輪郭線を描き、スローモーションで「どこまでも堕ちていく」イカロスの存在感をより感じさせます。

歌詞から恋人を太陽に、(恋に)落ちる/堕ちる自分をイカロスに喩えたラブソングだということが分かります。イカロスの神話は批判的な文脈で引用されることが多いので最初は勘ぐってしまいましたが、たぶん直球ラブソングだと思います。とはいっても、炎や燃えるイカロスの画もちゃんと浮かんでくる音です。歌詞中の主人公のように身を委ねざるを得ない世界観が広がる、恍惚を生む一曲。

(ちなみにサビのコード進行はI-IM7-I7-IVM7とBeatles『Something』などでみられるソプラノクリシェ進行で、R&B感が強いのはそのせいでもあるのかなと思ったり。)

その後も…目覚まし時計が鳴り『W●RKAHOLIC』ではミレパのセルフサンプリング。タイトルにそぐわず中田ヤスタカみたいなKawaiiエレクトロサウンドが目立ちK-POPっぽいトレンディさもある『):阿修羅:(』。『千両役者』はALBUM.verとしてダンスミュージック風のアレンジ(ドラムンベースなBメロは好きですが、その他はあまりハマっていないように思える)。

『硝子窓』~『2 Μ Ο Я Ο』のお風呂パートでクールダウンしてからの『STARDOM』~『BOY』で明るく駆け上がって最後はアンビエントでトラップ風味の『三文小説』。『MIRROR』で始まり『ЯOЯЯIM』で終わる。シンメトリックな構成も美しい。

キャッチーで叙情的なポップ/ロックセンスにインダストリアル、アンビエント、ダンスミュージック、エレクトロなど新しいフレーバーを盛り込み、攻めていながらもすんなり聴けるとても良いアルバムでした。サブスク時代だからこそさらに意義のあるシームレスでコンセプチュアルな構成、うーん面白い。

文章のオチを忘れてしまったので、爆弾を2つだけ置いていきますね。

💣💣

 

- - - - - キ リ ト リ - - - - -

 

今日の「1日1ラ」は、00s・588位・Rilo Kiley『The Execution of All Things』

①素朴で柔らかいエレキドラム。ギターも飾り気がないクリーントーン。女性ボーカルにはラジオフィルタが掛かっている。淡々と進む。ゴシックロック、ポストパンクのそれとも違う退屈で寂しげな空気を纏っている。ラスサビで唐突に生ドラムや高らかなベルの音が鳴り出すがボーカルはまだLo-Fiの殻に閉じこもっているようだ。歌詞では地球温暖化とおそらく鬱病について取り上げ、ダブルミーニングとして「凍った湖に立っている」=「ギリギリの状態」と表現している。実直で人間らしい葛藤も読み取れる。

②今度は特に状態異常を食らっていない。マイナーで一見普通だがレ♭の音が不穏。ベルの音がまた入っている。サビで急に想像もしなかった単語が飛び込んできた。歌詞はやはり意味深(今度はアメリカの衰退について?)。ラスサビ前にはまたもや自殺についての描写がハンマービートと共に歌われる。そして最後にはギターが荒く歪み出しボーカルも声を強く張る。暗いな。

③表題曲。バースは何の変哲もないベースがクローズアップされて始まる。聴きやすいロックチューンでギターもドラムもパワフル。明るいけどやっぱりシリアスな切り口の歌詞。

ポルタメントがかかったのっぺりシンセ。ボーカルは太く薄く歌い方を変え、カントリーっぽい雰囲気に調和している。後半でプツンと途切れ別の曲が始まる。

⑤今までのバンドサウンドにストリングスやブラスが加わり視界がさらに広がる。ギターソロが良い。歌詞は男女関係?さっきまでの曲を考えると、ポジティブに捉えているだけなのかそれとも皮肉なのかイマイチ分からない。

⑥クリスマスの曲にありそうな明るく弾んだメロディ。マーチングスネアが徐々に近づき、ラジオから聴こえるような音質。次のバースに移ると音質は元に戻りボーカルも活き活きと歌い出す。歌詞を読むとおそらく躁鬱(もしくは鬱)を表現していることが分かる。

⑦カントリー風のフィンガースタイルギター。2ビートが映える一曲。あまり意味が読み取れない。

⑧ピポピポとシンセが聴こえる。ドレミファソ~と上昇するフレーズも見られ、後半にはポップパンクにも接近する明るさに。最後は4曲目と同様別の曲が始まる。不気味で怖い。

⑨冒頭から力強く歪んだギターサウンド。別れの歌?

⑩シンプルな弾き語りスタイル+α。サウンドと歌詞がマッチしている。非常にポジティブな応援歌のように聴こえる。聴こえるけどどうしても裏を読んでしまう。

⑪ドラム大活躍のイントロがカッコいい。ロックでキャッチーなリフの連続。オクターブ跳躍が爽快。サビ後のギターソロではノイズを敢えて残していて良い。アウトロが不穏だが面白い。そしてまた4,8曲目のように別の曲が始まる。

⑫無音の4秒。どういうこと?

総合:内省的な雰囲気が漂うインディーポップ。メロディの明るさ・キャッチーさが秘めた寂しさを増幅させる。音楽では表現しにくいであろう空元気に似たものを感じるので凄いと思った。④⑧⑪の終わりには三分割された一つの曲がそれぞれ挿入されているが、この歌では両親の離婚や幼少期の思い出などかなり個人的なことを歌っている。

お気に入り:①②⑥⑪

今日はここいらで、おやすみなさい。