音楽を食べていくよ!

音楽以外も食べていくよ。

『Now And Then』の削がれた魅力【今日の吸収 #189】

おはようございます。

  • 💿The Beatles - Now And Then (2023) 🔥
  • 💿John Lennon - Imagine (1971)
  • 💿James Brown - Hot Pants (1971)
  • 💿Architects - For Those That Wish to Exist (2021)
  • 💿Blut aus Nord - The Work Which Transforms God (2003) 👀

無色透名祭、始まったみたいです。もう一回自分の曲を聴きなおしてみたものの、ゴミミックスのせいでボーカル埋もれすぎ+音がちっちゃすぎて悲しくなった( ノД`)

4,800曲も投稿されている*1と似たタイトルの曲もあるわけで、そちらの曲も聴いてみました。体感で音量が倍くらいある~。引き算を学ぶべきだと反省しました。LUFSメーターをみながら作んないとダメですね。ムカつく!自分に!

そして~、お待ちかねのBeatles。新曲『Now And Then』聴きました。最後にしてJohn作曲・歌唱のあまりにも暗いラブソング。マイナーコードでしっかり終わるのもなんだか寂しいが、フィナーレとしては相応しいとも思う。

ソングライティングはめちゃ魅力的。キーはAマイナーで、エオリアンのV-(onbVII)と通常のドミナントV7の使い分け、コーラスでG△をピポットコードとしてGメジャーに転調。ツーファイブでA-に偽終止してバースに戻る。

そしてJohnの声は『Free As A Bird』『Real Love』よりも原形を保って抽出されています。これは流石の最新技術。Ringoのドラムは昔と比べたらカチっとしてる。でも個性的で、やっぱりBeatlesサウンドの要なんだと改めて実感しました。もちろんPaulのベースも。ストリングスはGeorge Martinを思い出す感じで好みでした。

しかーし、当時のデモ版を聴いてみると、2バース目がごっそり抜け落ちている!デモの方が良いと思うのは私だけでしょうか?

G△からベースラインを辿りF#-からE△。急にEメジャーに転調。

ここ!ここ!この流れで転調しちゃう感じ!Johnのコード進行の魅力である「転調」と「下降」を併せ持っています。G→F#→Eの滑らかな重力に従って調をひょいっと飛び越えます。

Johnの転調技法についてはこの動画を参考にしてみてください。

参考程度にJohnが手掛けたBeatles楽曲で下降コードが使われているパッセージをちょっと並べます(やや上の動画とかぶります)。

  • 『If I Fell』(0:00, key=Db)
    Eb-|D△|Db△|…
  • 『Sexy Sadie』(0:25, Key=G)
    G△|F#△|F△|…
  • 『Lucy In The Sky With Diamonds』(0:30, Key=A)
    D-|D-onC|Bb|…
  • 『And Your Bird Can Sing』(0:36, key=E)
    G#m|G+|B△onF#|C#onF|E|…
  • 『Dear Prudence』(0:11, key=D)
    D△|D△onC|D△onB|D△onBb|…
  • 『All You Need Is Love』(0:08, key=G)
    G△|D△onF#|E-7|…
  • などなど

この中で言うと頭三曲がイレギュラーな下降なのですが、『Now And Then』の下降は転調しちゃってるので無論イレギュラーです。これはJohnの本領とも言えるでしょう。

その後はD△→E△と力強くトニックへ向かう。C△→B7でE△を期待させておいて長三度上に転調。G△に着地(コーラス)。

転調について比較するとこうなります。

  1977:Aマイナー👉Eメジャー👉Gメジャー
  2023:Aマイナー👉Gメジャー

大雑把にAマイナーを平行調・Cメジャーと見做した場合、2023年版は属調転調だけになってしまう。1977年版は長三度転調からの短三度転調、つまりはそれぞれ近親調でないやや離れた調を飛び越えることに。向かう先は同じGメジャーのコーラスでも、そこまでの道のりひとつで雰囲気が全く違うものになります。やっぱり突拍子のない感じがJohnっぽくて良いと思うんです。

やっぱり元はあくまでもデモテープ、無駄のないBeatlesの曲にするためには削るべきだったパッセージなのでしょう。確かに聴き直すと歌詞が詰まってない未完成感がありますね…。これは間違いなくポップの権化・Paulの采配です。

あと!コーラス(サビ)のコード!

  1977:G△|B-onF#|E-|
  2023:G△|B-|E-|

そう、ベースが強拍にF#を置いていないのです。これがどういうことか。元々あったG→F#→Eの「下降」のパワーがやや失われたことになります。あれ、G→F#→E!?さっきと同じだ。1バース目と2バース目の繋ぎ目、「G→F#→E」の音としては同じベースラインが異なる文脈を持っているという点も面白かったのです。これが無くなったのも勿体なく思ってしまいます。Paul~!

いろいろ言いましたが、細かいこと言うな!と言われたら、返す言葉もございません。

正直期待したBeatles感はありませんでした。冒頭からコテコテでモダンなピアノが出てきて「Paulのソロじゃねーか!」と思ってしまいました。Georgeのスライドギターだと思ってたのもPaulが弾いてたし…Georgeの影はかなり薄い。

技術が発展して綺麗に音声が抽出できるようになったとはいえ、『Free as a Bird』みたいなバランスで作って欲しかったというのが本音です。

 

- - - - - キ リ ト リ - - - - -

 

今日の「1日1ラ」は、00s・633位・Blut aus Nord『The Work Which Transforms God』

①ズーンと頭の周りに纏わりつくキモチワルイ定位の低音。鐘の残響?のようだが、音量は揺れ動き綺麗に減衰してくれない。今のところドローンアンビエント。②めちゃめちゃビックリした。急に大音量のデスメタルが始まった。デスメタルといっても、リフの正体はかなり霞んでいる。見えない。ブラストビートを叩くドラムは安っぽい打ち込みだ(しかもベタ打ち)。ボーカルもただでさえ癖があるのにエフェクトもかかって、散り散りになっている。Lo-Fiアンビエント×デスメタル?どういう聴き方をすればいいのか分からない。次第にはっきりとしたマイナーのアルペジオが聴こえてくる。音は止んでまた鐘が鳴る。怖い。③沈黙を破るデスメタル再び。さらにスピードを増して襲ってくる。ボーカルはおぞましい猛獣の雄叫びと化している。ギターはまだ不鮮明にうねうね。④アンビエントゾーン。金属の波。シークバーをみて衝撃に備える。⑤ビックリではなかった。テンポ遅めでギターもややドゥームっぽい。私にとってはこれくらいが聴きやすい。不気味なうめき声が聞こえるが、そこまで問題ない。派手な展開は無く、ギターリフ主体(ほぼインスト)。⑥うわー!!速いが、おかげで残響が糊になり一体化してしまっている。人間がまじないを唱え、怪物を生み出している様子。ぐい~んとゆっくりベンドし終了。⑦聴きやすいの来た。メロディアスだ。ハーモニクスがビーと不安を煽る。ボーカルはもう分からん。3分経ったくらいで演奏が止み、冷たい闇の中で風の如き残響を聴かされる。怖い!さっきまでの経験からして、アンビエントに入ったいつ驚かせて来るか分からない。でも今回は優しかった。伸び伸びとした演奏だし、安心できた。そのリラックスした状態でフェードアウト。アンビエントの空気を保ったままで良かった。⑧今度はキーボードの音色。とりとめのない無調の響きが不気味なテクスチャと共に広がる。心地よい、と思っていたら曲が終わりそう。衝撃注意!⑨急に来た~。ブラストビート。ボーカルはより呪詛感が強い。よく聴くと拍子がコロコロ変わっていることに気づく。中盤で重たく少し長いダンスミュージック的なキックが入ってくる。よくわからないけど意外と聴けるかも。⑩7拍子のリフ。7拍子という訳ではないみたい。いきなり途切れて戻る終わり方怖い。⑪無音トラック?⑫いままでより有機的なフィードバックノイズが広い音域に響き渡る。メロディは分かりやすく間を取ったドラミングも力強い。短調であることに変わりはないが、希望が見える。怖いボーカルさんもいないので。と思っていたら中盤でドンドン!と叩いたのち演奏が止まり再びノイズ。激しくなることなく元に戻った。最後までリラックスできた。

総合:Lo-Fiなアトモスフェリック・ブラックメタル。チープに聴こえる電子ドラムも不思議と浮いていないように聴こえる…いや浮いてるかも。それでも、底知れない狂気が際立っているように思える。ボーカルはイカれていて素晴らしい。

お気に入り:②⑤⑦⑩

今日はここいらで、おやすみなさい。