おはようございます。
- 💿Lamp - 一夜のペーソス (2023) 👀
- 💿Herbert von Karajan - 9 Symphonien (1963) 第六
Lampの新譜にして9枚目オリジナルアルバム、『一夜のペーソス』聴きました。いや~~~~最高です。75分もあったのに、するりと2周目に突入してしまいました。
まず驚いたのはミックス。ほとんどの楽曲において各楽器の定位が非常に極端。60年代ステレオ初期のミキシングを参照しているものと思われます*1。左からは女性ボーカル・榊原のウィスパーボイス、右からは男性ボーカル・永井のまろやかな歌声。双方ともデッド寄りの加工で距離感が近い。加えて周波数特性もダークになっています。たまにラジオボイスっぽくなったりも。明るいとはいえない曇った音像で今までより一層内省的な雰囲気を感じました。
ステレオ処理については個人的に聴きにくさが前面に出てしまうため正直あまり好きではないのですが、レトロ感やハモリが目立つ演出として捉えれば納得いきます。
もう一つ驚いたことは、曲間のシームレスな繋ぎ。アルバムとしての完成度をさらに上げています。サブスクによって再注目されたバンドがデジタル配信だけで「通しで聴くべきアルバム」を出すことの意義も非常に大きいと思います。
続いてソングライティング。土台は変わらずボサノヴァ/ラテンですが、そこに馴染む絶妙な具合で和の要素が取り入れられています。4th『ランプ幻想』に似たタッチを感じます。やや演歌チックな『曖昧で憂鬱な僕たちの』、三味線?をフィーチャーした『帰り道』、極めつけは『月世界旅行』の民謡的(テトラコルド)な調べ。そう来るか…。引き出しの多さにビビる。
まだまだ言いたいことはたくさんあります。そう、歌詞!メインテーマはやはり失恋。アルバムを通して何度も使われる単語が一見バラバラに聴こえる四季折々の曲たちを繋ぎ合い、一つの大きな物語を形作っているように思えます。まあ今作に限った話じゃないというか、Lamp作品全体に言えることかもしれませんが。
おそらく今作のキーワードは「時間」。
あとは、歌詞で言うと…セルフサンプリングも良かったです。アルバム名ですが『彼女の時計』、『深夜便』で「むかし25時君と最終列車」。ブチ上がりました。
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全体的に終止感の弱いフレーズが多くフワフワしていて、サウンドプロダクションも込みで『恋人たち』『ゆめ』のようなキャッチー路線ではありません。しかしそれら以上に甘酸っぱい歌詞と複雑なハーモニーの機微がコンセプチュアルにより強く感じられる作品だと思います。
秋にピッタリのペーソス(哀愁)溢れる音楽。ぜひ。
- - - - - キ リ ト リ - - - - -
今日の「1日1ラ」は、80s・250位・Alban Berg Quartett『String Quartets』!Spotifyにあったのはドビュッシーとラヴェルに加えてストラヴィンスキーまで入ってますが、今回はとりあえず2つだけにしときます。
①弦楽四重奏曲。デッデ一!!!発目からカッコいいドラマチックなモチーフ。怪しげで優美な印象。四重奏になってもドビュッシーらしい浮遊感がある。全音音階や増四度の反復など攻めた音を使いながらも、最後はゴリゴリのマイナーペンタなところが面白い。②副旋律パートがピチカートで演奏することで存在感にメリハリをつけている。軽やかで楽しげ。芯のある弦の音好きすぎる。極めて静かに終わる。③テンポが落ちゆったりとしている。前半ではドビュッシーにしては直球気味の和声進行がみられる。M7とaug7を繰り返し昇っていってからの美しいメロディ(3:50~)で無事ノックアウト。静かなパートで若干盛り上がりぬるっと終わる。④緊迫感溢れるチェロの音色。何度もピリオドが打たれては最初に戻る。不規則に半音ずつ上昇したり、ドシラソファミレドーとベタに降りてみたりする。⑤ラヴェルの弦楽四重奏に移る。ドビュッシーより攻めているように思える。というかドビュッシーが意外とキャッチーなのかもしれない。フリジアンドミナント+経過音M7の上行もみえる。⑥6/8拍子。ドビュッシーと同様ピチカートが映える楽章となっている。東洋的なモチーフが目立つ。ピチカートで弾いているので撥弦楽器的なニュアンスもあるのかな。⑦スローテンポ。印象派特有のぼやぼやとした幻想的な背景に陰音階っぽいフレーズが乗っている。ペンタもある。中盤のチェロ渋い。コロコロと色んな場所を移動している。分かりやすく反復しているところのおかげでやっと追いつける。⑧一転して激しいトレモロで刻まれる5拍子のモチーフ。凄い気迫だ。3拍子に変わりゆらゆらする。掴みどころがない。
お気に入り:①③⑥
今日はここいらで、おやすみなさい。