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【第四回】Meshuggahへの愛をぶちまける【ジェントの萌芽】

スウェーデン出身のメタル・バンド、Meshuggah

91年にリリースしたデビューアルバム『Contradictions Collapse』において彼らはルーツを色濃く反映したデスラッシュを展開した。その上で様々なリズムを実験し、最終的に「複雑なようで4/4に収まったリズム」という一つの方程式に辿り着いた。

それから3年、放った音はどのようなものか。

堅実なブループリント

続いて今回取り上げるのは94年リリースのEP『None』。ネガポジ反転と単色化加工を施された謎の人物が緑色に写る、なんともチープでミステリアスなカバーアートだ。

今作ではFredrikがボーカルを卒業、Jensはギターを手放しピンボーカルに専念、そしてリズムギター担当としてMårtenが加入している。ベースのPeter Nordin以外は現在と同じ顔ぶれとなり、ある程度メンバー構成が固まったという点でも重要な作品といえる。

1stは実質6弦ギターでの録音だったが、今回は2本のギターが7弦。物理的なヘヴィネスを存分に発揮させた初めての作品にもなった。

EPという形式なこともあって、収録曲は少ない。しかし

  • Jens、FredrikのCalipash組が作った《Humiliative》
  • MårtenがBarophobia時代に作った楽曲を基にした《Sickening》
  • Jens単独作曲の《Ritual》
  • Fredrik単独作曲の《Gods of Rapture
  • バンド全体でジャムって生まれた《Aztec Two-Step》

とそれぞれの個性が感じられる楽曲が目白押し*1*2。その上今後の作風とも繋がる部分が幾つかあるため、見逃せない内容になっている。

それでは、その中身を覗いていこう。

ジェントの萌芽

まずはオープナー《Humiliative》から。ピピッ!と電子音が聴こえるが、これはギターの音だ。ちょっとした空白の後、ぐつぐつと沸騰したフィードバック・ノイズを背に、7弦+ブリッジ・ミュート+ディストーションによる超ヘヴィなリフが炸裂する。ベースだけでなくタムやキックも同期し、パーカッシヴで厚みのあるサウンドを生み出している。既に1stよりキレも迫力も増していることが分かる。

一部のメタル系ジャンルにおいて、切れ味があってリズミカルなギターの刻みは「チャグ(=chug)」と言ったりする。それに対してMeshuggahが生み出したこの音色は、酔っぱらったFredrikが発したオノマトペに由来し「ジェント(=djent)」と呼ばれることとなった*3。現在、ジェントは音色を表現するだけに留まらず一大ジャンル名として扱われている。産みの親であるMeshuggahとは似て非なる音楽性のバンドが多かったりラジバンダリ。

閑話休題。大事なリズムの話に移ろう。

リズムについては、「8分音符11拍分のフレーズが3回繰り返されて、4/4拍子に収まる具合でちょん切られている」という構造になっている。

詳しく説明しよう。

「デデン、デデンデデン」の11拍のフレーズは以下のようになる。

●●○○○○○○●●○●●○○○○○○○○○
 

16分音符で22拍なので長さが半分の8分音符だと11拍。これを3回繰り返す。

4/4拍子1小節には16分音符が16個入っているので、16×4の形に揃える。すると8分音符1拍分だけ余分になるので、そこをちょん切る。

●○○○○○○●●○●●○○○
○○○○○○●○○○○○○●●
○●●○○○○○○○○○●○○
○○○○●●○●●○○○○○○○○○

フレーズの頭に下線を引き色を変えて境目を分かりやすくしたが、こんな感じ。最後の紫色はちょん切るので演奏しない。数式で表すなら  11×2+10=32 。

もしくは剰余を考えて 32 mod 11 と書くことも出来たり。

ともかく、冒頭のリフから「複雑なようで4/4に収まったリズム」になっている。

Meshuggahが用いる「複雑なようで4/4に収まったリズム」にはいくつか種類があるのだが、その中でもとりわけ頻繁に出現するものが上記のような「帳尻合わせ」タイプのリズムなのだ。前回の《Qualms Of Reality》で見られたリズムも同様である。

複雑さそのものをクローズアップした1stに対し、今作はミクロに複雑さを配置し加えてマクロな視点からある程度の滑らかさを感じ取ることが出来るようになっている。

4回帳尻合わせを繰り返し、最後にMetallicaの如く1/4拍子を挟んだのち凶悪なベースリフへ(0:41~)。5拍を8回繰り返し、ここでもラストに1/4拍子。

0:50~アンサンブルのユニゾンで先ほどのベースリフと同じリズムを刻む。最初のリフではハーフタイムで3拍目にあったスネアは標準の2,4拍目に置かれ、緩急を丁寧にコントロール。キックは変わらずリフに追従し、よりリズムを強調している。

5拍のリフが8回、繰り返された後に歌が入る。このとき同時に4/4拍子が5回繰り返されてもいる。8分音符換算で 5×8=8×5 だ。

「複雑なようで4/4に収まったリズム」ではある。しかし先ほどの帳尻合わせをしておらず、同じ4/4でも5小節繰り返している。カテゴライズするなら最小公倍数で噛み合う歯車(前回取り上げた《Abnegating Cecity》のもの)だ。

 

えーと

 

無計画に書き進めたら、何を言いたいのか分からなくなってしまった。少し考える時間をください。

 

今日はここいらで、おやすみなさい。

 

BACK:第三回

*1:Tomasは作曲者としてはクレジットされていないものの、ほとんどの歌詞を担当している。RushNeil Peartのようなドラマー兼作詞家としての立ち位置は既に固まっていたようだ。

*2:https://www.discogs.com/ja/release/2932158-Meshuggah-None

*3:“It threw us for a loop”: Meshuggah’s Mårten Hagström on Fredrik Thordendal’s hiatus, inventing djent, and new album Immutable