なるたけ遠くに逃避計画

THE ULTIMATE ESCAPE PLAN

ドローンの日(Metal Machine Musicを初体験❤)

 

私のインターネッツ観測網において、数日の間におよそ三人が同じアルバムを取り上げていた。ずっと気になっていた作品だったので、今日は朝からそれを聴くことにした。その作品とは、Lou Reed『Metal Machine Music』。今日に至るまで散々な悪評*1を被ってきた本作。「耳障りなノイズが長時間流れてるだけでツマラン!」とかなんとか言われてて、個人的にはネタ的な文脈以外でその存在を確認したことはほとんどないと思われる。どれほど酷い出来なんだろうか。一度も聴いたことがない私は「精彩を欠く一本の図太いノイズが2,3時間垂れ流し」「ビビーーー!うるせー!!!」みたいなものを想像していた。

 

songwhip.com

 

しかし、再生時間を見てすぐに拍子抜けした。1時間3分!?期待した割には短すぎるだろ!!じゃあ1時間でギブアップするほど不快なのか。いざ検証、ということで再生ボタンを押したらさらに拍子抜け。おいおいおい綺麗すぎ!!!音質ガビガビとかじゃないの?ピッチのレンジも思ってたより全然広いし(低音は無いけど)、フィードバックノイズは色とりどりに層を成して左右から耳を優しく挟んでくれるぉ。ストリングスをフィーチャーしたクラシック音楽を超倍速再生した感触の、結構要素が分散しているタイプのノイズ/ドローンなので、予想した退屈さはなかった。笛みたいなピロピロが楽しかったり、たまに聴こえる鳥の鳴き声もしくは赤ちゃんの産声にも近いピャーみたいな音が可愛かったり。全然聴けるしむしろ心地よいまである。普通に癒し音楽。

 

苦痛からは程遠かった。

 

つまんなくなかった。なんか逆に残念。

 

もちろん物足りない部分もある。展開が無いという批判は確かに頷ける。他のノイズ/ドローンに比べて特段面白いとは言えない。でも、平均的なノイズ/ドローンってこんなもんじゃないの?とも思う。平坦でアンビエントに近いのもあるし。あと、曲間の余白(もしかするとサブスクだけ?)。終始一貫したサウンドスケープがわざわざ途切れる意図がよく分からない。緩急の役割をわずかに果たしているのかもしれない。でも、個人的には全体を滑らかに繋げて欲しかった。低音が足りないせいで徐々に高音がキンキン感じてきてしまうのも少し惜しい。そして何より、これは誰の目から見ても明らかだが、ジャケットがダサい。B級感がプンプン漂うこのジャケットで「ロック史上最大の駄作」とか言われたら流石にバイアスかかっちゃう気がする。

 

とはいえ、やっぱり言うほど悪くない。総合的に考えてこの『Metal Machine Music』は、John CaleがVU結成前に所属していた実験音楽グループTheatre of Eternal Musicの『Day of Niagara』~VUの諸作から接続できる、少なくとも平均以上のノイズ/ドローン作品だという結論に達した。当時のロックシーンにおいては十分先進的だといえる。ロック中心でしか音楽を捉えられなかった化石評論家の誇張シーラカンス感想が独り歩き?しているだけだということがよく分かったので、これからは自分の耳で確かめ、自分の感性で評価することを大切にしていきたい。

 

てか『Metal Machine Music』って略すとMMMじゃん!見栄えいいな~。

 

『MMM』がそういうスイッチを入れたので、そのまま私はBrian Eno『Discreet Music』Pauline Oliveros『Deep Listening』と二つのアンビエント/ドローン作品を聴いた。前者はみのミュージックの動画に『MMM』と対になる作品だというコメントがあったから。表題曲よりパッヘルベルのカノンをドローン化させたやつの方が面白かった。後者は読んでいる本に「ディープ・リスニング」の試みについて書いてあって興味を惹かれたから。特に後半にかけて質感とダイナミクスの調整が素晴らしかった。どちらも面白かった。

 

今日はドローンの日でした。

 

*1:Wikipediaにまとめられている批評家の反応を参照