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ガムランを知る【今日の吸収 #230】

おはようございます。

ガムラン入門 インドネシアのジャワガムランと舞踊』読了。ガムランに特別興味があったわけではないのですが、名前はよく聞くけど何も知らんな~と思ってたので借りてきました。

前提として、ガムランガムランでも色々あって、大きく3つにカテゴライズされると言います。スンダ族が住む地域で庶民的に広がった西部ジャワ様式、落ち着いた宮廷音楽としての側面が強い中部ジャワ様式ヒンドゥー教の影響を受けたダイナミックなバリ様式の3つです。本書で主に取り上げられるのは中部ジャワ様式(の中でも柔らかく滑らかなスラカルタ様式)。1章~4章ではその具体的な楽器や理論について歴史・精神性などを経由しつつ学べます。即興演奏の流れも丁寧に書かれています。5章からはトピックを方向転換し、これまた多種多様な舞踊文化について知ることが出来ます。

全編に亘って図や写真、QRコードなどで分かりやすく説明されています。本場の先生方の演奏も聴けます。章の間には筆者の体験も交えてジャワの日常と文化を綴ったコラムが挟まれていて、これも何気に興味深い内容でした。

理論方面で得た収穫はかなり大きかったです。まず一番大きいのは拍感覚。西洋音楽では1拍目が強拍で3拍目が中強拍。ガムランではなんと2拍目が弱強拍で4拍目が強拍。。裏を強調しているとかバックビートだとかそういった捉え方ではなく、最後の拍の最後の音を示す「セレ:Seleh」に向かっているという考え方が強いらしいです。

4拍目には節目としてゴンというデカくて低い音の鐘が鳴らされるんですが、西洋的な価値観を以てするとこれが拍頭に聴こえてしまうという…。ややこしいことに、ガムラン合奏は強拍から始まるので(弱起ならぬ強起)、よりいっそう拍感覚が掴めない。メインメロディ(=「バルンガン:Balungan」)は全てが裏打ちに聴こえてしまいます。言ってしまえばシンコペーションですが、そういった西洋音楽の枠組みから離れない限り真にガムランを理解するのは難しいのだと思います。

「うなり」「ずれ」の話も凄いです。オーケストラの類では許されない調律の差異を敢えて作ったり、拍に対してルーズに音を入れ込んだり、それぞれの個性を許容(=「トレランシ:Toleransi」)しながらもアンサンブルとしては調和しているという。このことはガムランの音楽性だけでなく、外来文化の影響を受けながら隆興してきたその歴史にも、インドネシアの標語「多様性の中の統一」にも通ずるところがあるらしいです。カッコいい!

具体的な演奏技法の話では伸縮するリズム「イロモ:Irama」、イロモに応じてフレーズが細分化される「ミピル:Mipil」、2つの楽器が相補的に1つのフレーズを作り出す「インバル:Imbal」などビビっと来るものが。イロモ/ミピルに関してはカルターナカ音楽との類似性が、インバルに関してはガムランの影響を受けたと言っていたSteve Reichのフレージングの由来が見えました。

舞踊の章は軽く読もうかな、と思っていたらかなり情報が詰まっていて結構面白かったです。特に民間伝承の話。

馴染みのないインドネシア語が沢山出てくるので、ちゃんと読み込まないと「オフチョベットしたテフをマブガッドしてリット」な文章が続くので注意です。何度も読み返しながら読み進めるといった読書体験はとても久しぶりで楽しかったです。

なんでも文化を学ぶと世界の広さをつくづく思い知らされますね。今度は身近にある伝統音楽、純邦楽の本も読みたいな~とか。

 

- - - - - キ リ ト リ - - - - -

 

今日の「1日1ラ」は、90s・866位・АукцЫон『Бодун』!ロシア語だ。ジャケットが不気味。なんか寒そう。

①立体的な音響。気だるげな手拍子とギター。ボーカルはかなりヤバそうな歌い方をしている。途中からシャッフルビートに変化し、一斉に盛り上がりカッコいいロックなリフをかます。ポストパンクっぽいがここまでひそひそとした雰囲気はあまり聴いたことがない。

ロシア民謡?フォーキーで軽やかなピアノとアコギ、サックスも伸びやかにメロディを奏でている。ノンエレクトロスウィングといったところ(は?)。ベースもカッコいい。2:50~ボーカルがおかしくなる。アウトロのギターはチューニングがズレている?

③刻まれるタンバリン。ヒョロロ~と人魂が浮遊しているみたいなギターノイズ。今度はバリトンサックス?ラテン感もあるが。プツプツと硬くミュートされたベースとアコギでじわじわ攻める。ボーカルは魔術師みたいな歌い方をしてるけど、ビブラートの仕方が独特なのか「ワレワレハウチュウジンダ」みたいな感じになっている。怪しい雰囲気が好み。

④なんだかファンキーでラテンチック。音数の少ないドラムが巧みにダイナミクスを操縦している。

⑤シャッフルビート。効果音的に散りばめられた楽器。やはりドラムが良い。ゆらゆら不安定に速度を変えるボーカルも良い。

⑥ロシアっぽいがアラビアンなフレーズ、ドローン的な男声の低音が聴こえてきたりと多国籍感もある。ハリのいいスネアやベースラインはダブっぽくもある。

⑦のっぺりとした電子ピアノのリフにバンドサウンドが合流。1:16~こっから良い。ドラム優勝濃厚か。

⑧6+5=11拍子。ジャラジャラとストロークを続けるギターをバックに意気揚々と歌い上げる。もちろん不安定さはありながら。海賊フォーク。

⑨ギターがシタールみたいな音になっている。珍しく冒頭からオフビートにスネアを落としている。0:58~フラメンコみたい。後半で謎の水責めアンサンブルがある。

⑩5拍子。メインリフは5×4、キックは4×5のポリメーター。4つ打ちならぬ5つ打ちでグングン進む。サビではキックのパターンが5拍周期に変わっているのがミソだと思われる。サビ前のサックスが何気にいい味を出している。ベスト。

⑪おもろイントロ。アコーディオンみたい。1:23~ヘンテコで良い。次第に爽やかなギター、カウベルまで加わり明るく賑やかに大団円。テープストップでブツ切りもナイス。

総合:ひょろひょろポストパンク。ボーカルはいい感じにネジが外れている。全体的にいい意味で気が抜けた演奏だが、ドラムだけは常にタイトでアレンジも上品。おかげで綺麗にまとまっている。寂れた夜のサーカス。

お気に入り:③⑥⑩

今日はここいらで、おやすみなさい。