なるたけ遠くに逃避計画

THE ULTIMATE ESCAPE PLAN

激アツ・インド変拍子メタルを聴け!

 

  • 起床。二度寝を防ぐため、眠気覚ましにAt The Gates『Slaughter of the Soul』をつまみ聴き。ヘヴィでメロディアスなそのサウンドに浸りながら、思考を広げていた。『現代メタルガイドブック』には「西欧的な叙情とハードコア~スラッシュ要素の兼ね合いが素晴らしい(意訳)」と書かれていて、もっとこういう因数分解をしていく必要があるなあと思うゃ。因数分解…、さらに進んで「西欧的な叙情」と「ハードコア~スラッシュ要素」をそれぞれ分析することでもあるゃ。前者で言うと、ドミナントモーションを前提とした終止感の強い短周期の民謡的フレージング、とか(まだ明確に把握していない)。場合に応じて音楽理論という武器を使いながら分析を積み重ねて、作品が置かれた入り組んだ文脈を見出す。創作のフィールドだと、このプロセスを大幅にすっ飛ばして独自の理論を即座に組み立てられる人間がチラホラいる。少なくとも私はそうではない。

 

 

  • Vader『Sothis』
    儀式で呪文を唱えているかのような不気味なプロローグから、硬くて重いデスラッシュへ。目が覚めるバチバチのキメ。ギターフレーズの端々からMorbid Angelの影響が嗅ぎ取れる。後期をスラッシーに加速させた感じのM2、前期の独特なトレモロリードプレイを反映したM4、M5。ボーカルの声質と発声方法はデスメタルというより若干ハードコア寄り。着実に地面を踏みしめた上で速度感を保っているのが良い。そんな重さと速さの両立が高いレベルでなされているのは、やはりM5"The Wrath"。爆速スラッシュビートからSlayerを彷彿とさせる後半のブレイクダウン的展開まで隙が無い。ラストトラックはBlack Sabbathのカバー。《Black Sabbath》のケツに《Behind the Wall of Sleep》をちょっとだけくっつけている。これは微妙。Roger Watersの『狂気』セルフカバーぐらいのコレジャナイ感。言い過ぎかもしれない。それほどではないが、とりあえず歌い方が合っていないと思う。とはいっても、作品の一部ではなく楽しいトリビュート楽曲として聴けばなんともない。あと、ジャケ写のデザインがDeicideの1st~2ndに似ているのはどういうことなんだろう?タイトなアンサンブル、M4に挟まる変拍子あたりはDeicideっぽいと言えなくはないが。

 

  • Freak Audio Lab《Fat Devil》
    Mattias Eklundhのソロプロジェクトに、ついにB.C. Manjunathが現地参戦!彼らの初コラボは2年前の《Primality》。今回ドラムを務めているYogev Gavayは、前回のコラボ曲《Terra Incognita》で複雑なリズムのビジュアライズを行っていた。三度目のインド・メタルは万全の態勢だ。再生してすぐウキウキの13=7+6拍子!アタック部分でつい「Ta Di Gi Na Thom・・Ta Di Gi Na Thom・」と口ずさんでしまう。イントロが終わると、ジェント的な刻みと4/4フィールのスネアに乗りながらManjunath御大の高速コナッコル*1が炸裂。気になるのはそのあとの変拍子部分!軽い説明を書いていこう:1:48~の部分では「523+5332+544(6)」といったインド音楽にも通ずる加算構造が7.5小節分反復され、最後は6の部分を切って解決する半Meshuggah式ポリメーター*2が展開される。スネアを追えば簡単。ついでにフレーズのピッチがイソリズム*3になっている。最終盤のブレイクダウン(3:17~)は、「4433+44333+4433+443333」、3の数が2324と増えるABAC-AMP。切り詰められず4+1回反復される。シンバルとスネアの二重態勢で4/4のサポートがついているので、そんなに難しくない。楽しい!コナッコルとメタルのコラボはここでしか見られないであろう。刺激的なものがお好きな方は是非聴いてみてほしい。過去のコラボ作よりも複雑すぎない構成で、比較的キャッチーで乗りやすいのは間違いない。

 

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*1:一回目は13=7+6拍子の区切り目だけを前提としたシンプルなもの、二回目は13拍子×4の枠に222+333+444の加算構造を重ねていて、かつラスト1拍が次の小節の頭と被る「Tihai」になっている

*2:120(4/4×7.5)=42(10+13+19)*2+36(10+13+13)

*3:Mattias Eklundh関連だと《Murder Groupie》で見られる