音楽を食べていくよ!

音楽以外も食べていくよ。

ムズい社会文化の本を四だ四

 

7時起床、早起き成功。きなこトースト。

 

『「傷つきました」戦争-超過敏世代のデスロード』を読み終えた。200ページ程あったが、要所要所で用語や定義を調べたりしながら読んだので全部で4時間ほどかかった。それなりに理解はできたと思う。ためになった。

 

舞台はヨーロッパ。昨今の反差別主義の波は大きく二分されているという。一方は、枠に囚われず他者の文化に開放的/流動的な「普遍主義」。もう一方は、断固として生まれつき持つ属性とそれに還元される特権を標榜する閉鎖的/分離的なアイデンティティ至上主義」。どちらも同じく多様性の名の下に活動しているが本質は大きく異なる。「みんなちがってみんないい」が前者だとしたら「私たちは違う」が後者だ。

 

本書のメインは後者である。文化の混血を嫌って盗用の罪を着せたり、口を揃えて「傷つきました」と唱えたり、被害妄想をマイクロ・アグレッションという専門用語で正当化したりさえすれば、多数派はたちまち頭を下げる。彼らがステレオタイプを加速させ巻き起こしてきた様々な衝突とそれに対する痛烈な批判が、明快なエッセイを通してまとめられている。

 

評論家である筆者のカロリーヌ・フレストは同性愛者であり、すなわちマイノリティとしての経験が多い。加えて、イスラム原理主義者に同胞の編集部が殺害された諷刺新聞「シャルリ・エブド」の元執筆者でもあり、文化に携わる映画監督としても活動している。さまざまな視点や事柄から批判が展開されるので、ニュースで聞きかじる何倍もグロテスクな世界を知ることが出来る。

 

そもそも私は「文化盗用」の概念自体について疑問を持ったことからこの本を読み始めたわけだが、フランスの演出家・アリアーヌ・ムヌーシュキンの言葉は非常に分かりやすかった。以下に引用する。

 

「さまざまな文化、すべての文化は、私たち皆の諸文化なのであり、さまざまな源泉であり、そしてある意味では、それらすべてが神聖なものです。なので、その源泉のものを飲もうとするときには、敬意と感謝をもって、学ぶ姿勢で臨まなくてはいけない。しかし、それに近づくことを誰かが私たちに禁じるなどということは、受け容れられません。そんなことを許せば、私たちはオアシスから砂漠へと押し返されることになるのですから」

 

カロリーヌ・フレスト/堀茂樹『「傷つきました」戦争-超過敏世代のデスロード』(p118)より引用

 

すべてが神聖な源泉であるという。そして文化の理解は忘れてはならない。インスパイアを受けたり取り入れたりするのは全く持って悪いことではないのだ。このことは筆者も強調していた(p144)。

 

ただ、この本に書かれているのはいち筆者の主張である。功罪の罪の部分に寄っていた感触があり、まるっと説明していた訳ではなかったと思う(当たり前ではある)。私は普遍主義派ではあるものの、公平な視点を鑑みてアイデンティティ至上主義のメリットについても知りたい。他の著者の本(特に他文化圏の)も読んで比較してみたい。

 

23:55なので、もう書けないけど、まだ色々脳みそに入ってるよ~

 

今日はここいらで、おやすみなさい。