なるたけ遠くに逃避計画

THE ULTIMATE ESCAPE PLAN

MeshuggahのObZenはどうなっている!?

 

うばー

 

Meshuggah布教委員会・副会長の乳母車しんすけと申します。

 

今日は《ObZen》の分析資料を持ってまいりました。久方ぶりに音符を書いたものですから、音価が合っているかどうか不安ですが、参考程度にご覧ください。念のために言っておきますが、すべて4/4拍子に収まりますのでご安心ください。

 

 

イントロ:Riff A(0:00~)

 

 

17とか64とかは8分音符の数です。ここでは8分音符17個分のリフを8分音符64個、すなわち4/4拍子8小節に収まるように繰り返します。64を17で割ると余り13なので拍構造は上のような式で表せます。なお13個分のリフは17個分のリフを途中でちょん切ったものなので省略しています。

 

17拍からなるイントロ・リフは大まかに3+5+3+6と分割することができ、これはABAC-AMPという拍節構造に当てはまります。ABAC-AMPはGregory R. McCandlessが提唱*1した特定の数的法則を持った加算型拍節構造(Additive Metrical Process)で、フレーズの拍をABACという4つのグループに分けたとき「A<B<C」の大小関係が成り立つものを言います。このイントロ・リフはまさにABAC-AMPの条件を満たしています。Cと表記できるものをわざわざB´としているのは、音型からしてBを延長したものと考えられるためです。

 

イントロは2回し16小節(=8分音符128個分)あるのでこれを2回繰り返してバースが始まるという流れです。4/4拍子に聴こえない?スネアが足元を照らしてくれます。2回し目からはトレモロリフも補助輪です。

 

バース1:Riff B(0:45~)

 

 

 

バース1においては、全体で41拍のリフが3回繰り返されたのち余剰分の5拍が足されて4/4拍子16小節を埋めることになります。Riff Aと同じく9+10+9+13とABAC-AMPが用いられていおり、CはBの延長B´となっています。ここでは、リズムのついでに符尾の向きで音程関係を表しています。

 

コーラス1:Riff C(1:07~)

 

 

もう式については説明不要でしょう。Riff A、Bと異なり、ここではフレーズをABACという形で分割はできるものの、加算構造が満たされていません。ABAC-AMPとは反対に「A>B>C」という大小関係を持っているので、Addictive(加算)の代わりにSubtractive(減算)を使って、ABAC-SMPが存在するといえます。

 

ブリッジ:Riff A(1:31~)

 

1小節分のブレイクを経て、イントロで用いられたRiff Aが再びやってきます。

 

コーラス2:Riff B(1:54~)

 

バース1で用いられたRiff Bを新しいピッチとアーティキュレーションで再利用。ここでボーカルに注目してほしいのですが、コーラス1と全く同じ歌詞のリズムを、若干リフに合うように整えています。それでいて最後は同じリズムで締めくくっています。Meshuggahの楽曲においてはこのような緻密なボーカルラインが見落とされがちです。

 

ポストコーラス:Riff D(2:17~)

 

 

簡単です。分割する必要もありません。ただシンバルもスネアもリフに追従してしまうので、あなた自身の平衡感覚を頼りにしてください。

 

間奏:Riff E(2:39~)

 

 

シンプルな反復構造を持っていますが、変則的に聴こえます。それもそのはず。ここでは、Isorhythm(イソリズム/アイソリズム)という、一連のピッチ=音列を異なる反復単位のリズムに当てはめる手法が用いられています。「ほぼ」と書いてあるのは、アクセントを無視する瞬間があるからです。おそらく調の中心であるFに着地させるためだと思われます。ちなみに、ベースは最低音のFをしばらくギターとのユニゾンから外れながら長く伸ばしています。

 

4/4を捉えきれない人は、一定間隔で鳴り続けるシンバルをメトロノーム代わりにしましょう。

 

ブレイク~プリバース:Riff F(3:02~)

 

 

ABACを分ける切れ目がないと判断しAとA´のみにしました。ここも符尾の向きで音程関係を表しています。符尾下向きの部分ではスネアもなります。単位が偶数なこともあってしかも8小節がAでピッタリ終わる*2ので比較的単純ですが、フレーズの中で最も音価が長い4分音符がそれぞれのフレーズの末尾でなく先頭から3つ目に配置されているので、やや構造の把握が難しくなります。

 

考え方によっては、リフ自体の頭は2つ目の「3」グループであり、ここではリフが「途中から始まっている」と捉えることもできます。このような知覚を曖昧にするフレージングはMeshuggahの常套句(2nd『Chaosphere』から見られる)でもあり、Olivia R. Lucasは論文*3において同アルバム収録曲《Pineal Gland Optics》《Pravus》をその観点から分析しています。

 

ドラムのフィルインからの全楽器(3:13~)は8小節の間A部分だけを繰り返します(12×10+8=128)。リズム的には本楽曲で最もシンプルなパートです。

 

バース2:Riff F(3:36~)

 

繰り返しで、反復範囲が16小節に伸びます(26×4+24=128)。先ほどF#だけを鳴らしていた部分(符尾下向き)のピッチがメロディを奏でるようになります。

 

アウトロ:Riff E(3:59~)

 

間奏とほぼ一緒です。高音のリードギターが加わりますが、フレーズにこれまでのような反復性はありません(たぶん)。

 

まとめ

 

全体のリフの流れは「ABCABDEFF´E」となります。イントロ・リフからデデデン!のモチーフが散りばめられていて、統一感もあります。ギターリフがありそうでないのも面白いです。これをきっかけに《ObZen》の素晴らしさ並びにMeshuggahの素晴らしさをご理解いただけましたら幸いです。

 

それではまた。うばーい