5時30分、近所のおじさんの咳に起こされる。閉め切った窓を貫通する大音量、半ば叫んでいるような発音で「アエッヘッ!」。癒しの雨音は吹き飛ばされた。気分は悪いものの目覚めは良い方だったので、すぐに布団を畳んで顔を洗い、椅子にもたれてパソコンの電源を付けた。今日こそは時間を無駄にすまい。誇張気味に忙しく振る舞って自らを鼓舞しつつ暗示をかけよう。まず、昨日図書館から借りてきた二冊の本のどちらかを読もうと思った。しかし、自分が能動的に選んだどちらの本も開く気が起きない。ここしばらく自分の知的好奇心を刺激しようと難解な哲学書や批評的な評論を読み漁ってきた結果、頭の中が未消化の概念や理論で溢れかえりパンクしているからだ。
美味しいけど限界はある。単純な喜びを感じる余裕さえ無くす、客観性の胸やけ。それは飽きというよりも疲れで、疲れは解消しなければいけない。特に難しい本に苦戦し始めた先月辺りから、読書の範疇で*1一度気晴らしを試みたいという気持ちがうっすらとあった。今日は何となくキリが良いので、小難しい二冊の前に「リフレッシュ本」を挟むことにした。
手に取ったのは、話題(と言うにはもう遅い気がする)のミステリーホラー小説『変な家』。弟が数か月前に貸してくれたのだが、そのときちょうど実写映画化の話題で持ち切りだったので、漏れなく逆張り精神による流行物アレルギーが発症してしまい一向に読む気が起きず放置していた。気晴らしのために計画的に取っておいたのではなく、ほとぼりが冷めた頃合いと気晴らしのタイミングが偶然重なっただけ!ラッキー
そんなことはともかく読みマスオTV24時間スペシャル愛は地球を救うのか。オモコロの原作記事もYouTubeの動画もみたことないので、事前情報ほぼゼロで対峙できてハピです。2月に読んだ平山夢明『あむんぜん』ぶりのフィクションを、啜る~!!!平易な表現と対話体のおかげで文章が淀みなく入ってくる~。ただテンポが良すぎるのとほぼ根拠のない推理と伝聞を軸に進むので物語としては精彩に欠けるしご都合主義も感じてしまう。でもそこはメインじゃないから別にいいか~。「家」の間取り図は逐一書いてくれて優しい。文字の量も相まって前半は絵本みたいだったけど、空間認識能力が弱い私にとっては1-2階間の縦の繋がりとか想像しやすくてありがたかった。後半からは『犬神家の一族』みたいな(これくらいしか例を知らない)遺産相続の話になる。これってタイトルの「家」が家屋そのものだけじゃなくて封建制・家父長制をも意味してるってコト!?…調べたら原宿さんが同じこと言ってた!ウオー!
考察も並行しながら2時間で全250ページ読み終えた。このスピード感。難しい本は同じ時間かけても40ページ位しか進まなかったのに。1ページあたりの文章の物量的/精神的密度に倍以上の差があるので当然と言えば当然だが。でも、本質はページとか分数じゃなくて脳内!私はこの前観たばかりの『残穢』*2っぽい映像を投影しながら読んだ。何はともあれ楽しかった。綺麗さっぱり解決せず含みのある終わり方で実際に続編もあるとはいえ、筆者と一つの物語にピリオドを打つ共同作業の楽しみを思い出すことができてとても良かった。これチャーメチャーメに大事やん、!!!!!!!!!
ハンバーグ素
敵
や
ん
私の場合、哲学や評論を前にすると客観性や無限メタ認知に憑りつかれてしまうから、閉じられた世界に浸ることができる小説を定期的に読んでいい感じにバランスをとりたい。という話でした。あと、早起きするだけでこーんなにツヤツヤしますよ!